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書評・レビュー

2014年12月16日 (火)

『「治療 12月号」特集 ポリファーマシー 不要な薬に立ち向かう』を読んで

ポリファーマシーについての書籍は以前、『提言日本のポリファーマシー』(徳田安春編集)を読んで(http://manabunoda.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-dcd9.html)で取り上げました。今回の特集では、医師、薬剤師等が様々な観点からの意見を述べられています。

今回本書を読んで思ったのは、これは医療者全員で協力しないとなかなか改善していかないということです。処方医、薬剤師、また他職種がポリファーマシーのデメリットを認識し、しっかりと取り組んでいかないといけないと感じました。
中でもポリファーマシーの原因は、医師にあるような言われ方がよくされますが、個人的には半分は薬剤師に責任があると思います。今ではほとんどの処方を薬剤師が鑑査していますからね。少し問題のある処方をそのまま調剤しているのは、よく言えば医師に気を使っているのですが、悪く言えば見て見ぬふりをしているのだと思います。
薬剤師がしっかり発言しないと、ポリファーマシーの問題は改善していかないと思います。これからは見て見ぬふりをするのではなく、積極的に処方提案していきませんか?

では気になった部分を抜粋しながら、意見を書いていきます。

まずは、高齢者におけるポリファーマシーについて。

「ある研究によると、高齢者の26%が5疾患以上に罹患しているとされ、また別の研究によると、65歳以上では半数が3つの慢性疾患をもち、21%は5つの慢性疾患を有するとされる。このため、これらの多くの病態を薬剤で治療しようとすると、必然的にポリファーマシーとなる。」(P1678

また、

「よいエビデンスが証明されている薬剤にしても、そのスタディのほとんどは、非高齢者でかつ併存疾患の少ない患者群を対象に行われており、多数の疾患を抱える日本人高齢者を対象としたものではないことに注意すべきである。つまり、高齢者にEBMを適応するのは困難なことが多い。」(P1719

ポリファーマシーの多くは高齢者で見られます。上記のように、高齢者は複数の疾患を抱えていることが多いですが、高齢者に使用する薬剤に関するエビデンスは少ないのが現状です。全ての疾患を治療する必要は必ずしもありません。薬剤のエビデンスを十分に吟味し、その薬剤の処方の妥当性を考慮しなければならないですね。

ポリファーマシーの原因については色々書かれておりまして、

1度開始した治療薬中止の判断は行われないことも少なくなく、急性の病態を改善するために使用された薬が慢性期にも漫然と使用されることなどは、その一例である。」(P1679

よくありますね。

「重要であるにもかかわらずあまり知られていないのが、薬の副作用を薬で治療するprescribing cascadeといわれる不適切処方である。」(P1679

これも良くありますね。また、副作用予防としての投与も多く、それで薬剤数が多くなったり、副作用が出たりというのもありますね。

他にも様々あるようで

「必要な薬剤を、必要な分だけきちんと服用することは、ポリファーマシー予防の観点からはとても大事である。
アドヒアランスが低下治療効果減弱さらに薬剤が追加ポリファーマシー薬剤が増え、副作用も増え、服薬スケジュール複雑化コスト高さらにアドヒアランスが低下、という循環が生じるためである。」(P1720

この悪循環もよく見ますね。新しい薬剤を出すより、アドヒアランスを改善させる方が先じゃないのかと。難しいのかもしれませんが。処方通り服薬する、できないのならむやみに追加せず、アドヒアランスの改善を試みる、原因となっている処方内容を変更するなどの試みが先に必要ですね。

他に、

「勤務医時代から20年来通院されている方もおられる。そうした患者は、複数の生活習慣病をかかえ、長期に多剤の薬剤投与を受けていることが少なくないが、多くの薬剤を処方することに患者・医師双方が、疑問を感じることなく過ぎ、毎回の診察がなかばルーチン化してしまい、医師もいわゆる「do処方」を繰り返してしまうという構造が成立しやすい。」(P1740

これもよく見ますね。もうずっと飲んでいるからというやつです。私も疑義照会しようと患者さんに伺ったのですが、ずっと飲んでいるから続けたい、といわれて断念した経験が何度かあります。患者さんになんと言われようと不要だと思えば中止すべきなのですが、それがなかなか難しいようです。

転院患者では、こういったこともよく見受けられます。

「入院診療で患者を担当した病院の医師は、薬剤の処方内容を、地域の紹介元などの医師へ書面で報告することが求められる。その際、処方理由も報告されることが理想で、それがポリファーマシーへの対応となるであろう。」(P1760

紹介状には、主な症状の経過はほとんどの場合記載してありますが、処方薬の処方意図は記載されていることが非常に少ないです。なぜその薬剤を処方しているのか、どうしてその用量なのかなど背景があるはずなのですが。転院時にすでに十分に中止できる薬剤が含まれていることも多いですので、処方意図を記載するのは重要だと思います。

つぎは、他職種との連携について

「ポリファーマシーを減らすためには、他職種連携は重要な課題である。介護施設での薬剤師の介入により、潜在的薬物治療問題への気づきが増え、薬物有害事象がなくなった、入院が減少した、という報告がある。」(P1679

薬剤師の介入により薬剤数が減ったという論文がいくつか報告されており、本書でも数例紹介されていました。私は病院で勤務していますが、ポリファーマシーにて介入する例も多く、薬剤師の役割は大きいと考えます。特に介護施設では、doで処方される傾向があり、また他の病院からの転院患者も多く、薬剤師がその処方の妥当性を判断するための介入の余地というのは大きいと考えています。

ただ、その一方で

「保険薬局の薬剤師がポリファーマシーに疑問を持ったり、薬が多すぎると患者から相談されても、医師に処方を減らすように言い出せないことは多いのである。
(中略)
医師と薬剤師が十分に連携をとりお互いの職能を有効に利用すれば、患者にとって不必要な処方をなくす道が開けるのではないだろうか。
そのために必要な薬剤師側の能力として、基礎薬学や添付文書、DI情報だけでなく、臨床論文を読みこなす能力が必要であると考える。」(P1692

薬剤師に、その介入に適した知識があるかどうかと問われると、まだまだ足りないのではないかと思います。論文を読むような習慣がない薬剤師は多いように感じるからです。今後はこういった介入が求められてくると思いますので、薬剤師にも臨床論文を読みこなす力は必須ですね。

薬剤師との連携では、素晴らしい取り組みもありました。

1人診療であるがために自分の処方を再評価する機会が少なく、またポリファーマシーの自覚はあってもなかなか決断できないことがあると思われる。これに対してお勧めしたいのが、薬剤師との連携である。
(中略)
当院では、以前から近隣の保険薬局とのミーティングを月1回行っているが、薬剤師にその月の9種類以上の処方があった患者をリストアップしてもらい、そのなかでも顕著な例を取りあげて、どの薬が減らせるかを検討している。」(P1742

剤数が多いことが悪いこととは限りませんが、どこかで線引きをしなければ見直すべき処方のピックアップができませんので、9剤というルールを作り、こういった取り組みができているのは、とても素晴らしいことだと思います。

また、薬剤を減らす取り組みにはこういったのもあるようです。

「常に薬剤の減量・中止を検討することはポリファーマシーへの対応の基本である。
(中略)
たとえば、処方薬の内容を患者の誕生月などに定期的に見直すことができれば理想的である。」(P1761

毎回処方薬の内容を検討するのは時間の制約もある中で難しいことなのかもしれません。ただ、ずっと見直さないというのも問題です。誕生日月等、年に23回は見直す時間を作ってほしいというのが私の思いです。

ただまあ、減らせばいいってものではなく

「単に処方薬剤を「減らす」だけに気をとられるのは、それ自体が目的化するおそれがある。真の「マインド」とは、あくまで個々の患者に対し、いかに適切に薬剤を処方するかであるということを忘れてはならない。」(P1742

これはしっかり頭に入れておかないといけない概念ですね。

また、自分の使える種類の薬剤で治療をするというのも大事だと思います。

personal drug(P-drug)とは、WHOにより1995年に提唱された概念で、自家薬籠中の薬剤、つまり日常よく診療する症状・疾患に対して、自らの標準的薬剤を備えることである。一般に、医師のP-drug4050種類といわれるが、筆者は一般臨床医のP-drugはもっと少ないように考える。」(P1760

転院患者では、そのまま処方が引き継がれることが多いですが、処方医がその薬剤に関する知識を有していないことも多いです。そのため、副作用に気づかなかったり、気づけば禁忌症例になっていた、その疾患は完治しており処方の必要がなかった、なんていう例をいくつも目にしてきました。そのまま処方を引き継ぐのも最初はいいですが、後々は自分の使い慣れた処方薬に変更していただきたく思います。

そして最後に、個人的に気になったので

「赤の他人からいわれのない金を受け取ったり、食事をおごってもらったり、研究会や学会の費用・交通費を出してもらうのは悪いことだというのは、子供でもわかることだ。それが利害関係のある人からの贈り物なら、なおさらのことであり、賄賂の授受だと糾弾されても反論できない行為だということも。」(P1696

pill pusher-薬をねじ込むメガファーマー』の章では、あまり見かけない製薬メーカー批判、製薬メーカーと癒着する医療者の批判が、かなり強烈に書かれていました。何も反論の余地はないですし、当たっている部分も多いと思います。こういったこともポリファーマシーの原因になりかねないので、自覚していかないといけないですね。


以上、ブログでは一部しか取り上げられませんが、大変学びの多い内容で、薬剤師にはぜひとも一読してもらいたく思いました。間違いなく薬剤師が活躍しないといけない問題ですので、問題点を共有し、様々な取り組みをしていくことができれば、と思います。

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2014年5月25日 (日)

『提言‐日本のポリファーマシー』(徳田安春編集)を読んで

今回ご紹介するのは、「提言‐日本のポリファーマシー」(徳田安春編集)です。

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本書は2012630日に行われた、「第2回 家庭医・病院総合医教育研究会」の討議をもとに編集されたものです。ポリファーマシーのことが中心に討議されたようで、その一連の討議の内容がまとめられています。また後半1/3くらいは、ポリファーマシーとは関係のない地域医療臨床実習関連の内容がまとめられています。

この書籍は以前から興味があって読みたかったのですが、先日プライマリケア連合学会学術大会に参加し、ポリファーマシーに関するポスター発表を見て、薬剤師が積極的に取り組まなければならない問題だという認識を持ち、この書籍を読むことにしました。

「ポリファーマシー」に正確な定義はまだありません。文献によっても異なります。薬剤数でいうと、5剤以上、7剤以上、10剤以上など様々なことが言われています。また多剤併用だけでなく、必要な薬剤が使われていないことや、不要な薬剤が使われていることも「ポリファーマシー」の一部です。もちろん、年齢や体重、腎機能、肝機能に対しての不適切な薬剤・用量選択も含みます。そのため個人的には、『医薬品の適正使用』と訳するのが適正なのかなと思います(もう少しかっこいいのがいいのですが…)。

「ポリファーマシー」は海外では徐々に使われてきている概念ですが、日本ではまだまだといった印象があります。薬剤師の中でもごく一部しかこの言葉を知らないのではないかと思います。もっともっと日本でもこの概念を浸透させていかなければならないと感じましたし、薬剤師が積極的に取り組んでいかないといけない問題だと思います。

 

誤字、脱字が多いのが少し残念でしたが、大変勉強になる内容ばかりでした。ポリファーマシーの概念から様々な取り組み、論文が紹介されていて、また改善案まで書かれているので、一から深くまで学ぶことができます。ぜひ薬剤師には読んでいただき、ポリファーマシーに関する理解を深めていただき、現在の薬物治療の内容を見直してもらいたく思います。

全体を俯瞰して管理することは大事な一つの仕事なのではないでしょうか。(中略)それを薬剤師がするのか、家庭医がするのか、病院総合医がするのか、もしくは専門医であってもその患者を一番診ている医師がするのかはわかりませんが、それが立派な業務であることを認識させることは意味があることだと思います。単に俯瞰するだけでなく、この人に関しては私が統括して診ているという権限を与えていくのが大きな意味を持つのではないでしょうか。門前薬局があってかかりつけ薬局があって、薬局がひとつにまとまるだけでは不十分であると思います。もう一歩踏み込んだシステムがほしいと思います。

→なかなか難しい問題提起です。ただの「かかりつけ薬局」ではなく、もう一歩踏み込んだ薬局が今後求められているようです。

 

先輩の処方がどんどん積み重なっていくので薬を切りにくい。患者も薬を減らしてほしいという。病歴でなぜこの薬が入ったのかを診療録に記載することが基本である。減らすのは、患者の将来に責任をもつ、かかりつけ医でないといけない。医師も自分の「かかりつけ薬剤師」を持つことが有用である。

→医師は、先輩の医師や他の病院の医師の処方を変えにくいようです。そりゃそうですよね。でもそういったことがこの問題の大きな原因の一つになっているのだと思います。そこには積極的に切り込んでいななければならないですし、薬剤師も提案、アドバイスしていかなければなりません。

 

薬を嫌がる文化、出す方も罪悪感を感じるような文化を作るべきだと今思います。減薬するのは入院中が一番で、その役割は、憎まれ役を買ってでも病院総合医が担うべきだと思います。開業医の先生方の中にも、入院の機会に薬を減らして欲しいと思っている先生方もたくさんおられると思います。そういった先生方を巻き込んで、薬を減らすと患者さんも喜び、医療費節減ができてみんながハッピーになる、そんな新しい文化を作るのがいいと思っています。

→薬を欲しがる文化は本当に深刻だと思います。「不必要な薬」を減らすことはメリットしかありません。そういった文化を今後は作っていかないといけません。

 

患者の訴えに対して、医師は患者への介入を行う。この際に一般診療の場において問診、観察、評価・治療計画を立て、患者に説明を行い実行するという過程をたどる。しかし、多忙な日常診療の場において、その煩わしさから、患者からの要求に対して、反射的に処方という場合もある。例として①いわゆるウイルス性上気道炎に対して抗菌薬処方、②不眠の原因を考えずにすぐに睡眠薬を処方、③それぞれ原因の異なる浮腫に対して、反射的に利尿剤の処方などがある。病態を考慮せず、エビデンスに乏しい治療を行うことを可能な限り避けるべきである。

→全てよく見かけます。抜本的な改革が必要なんですかね…

 

ある種のガイドラインに準ずることに重きを置きすぎて、高齢患者の包括的な評価による予後判定よりも優先してしまうことがある。薬物治療でマニュアル的に治療しようとする行為が高齢患者の予後を変えるような結果が本当に得られるかを真摯に考え、患者それぞれの状況や病態に合わせ、「治療の最終目標が何であるのか」を常に検討し、処方の見直しを継続的に行うべきである。

→真っ当な意見だと思います。高齢者にガイドラインを当てはめると、治療をしなければいけないことだらけになります。そうではなく、包括的に評価することで優先順位を決めていくことが今後は求められているのだと思います。

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